加藤賢一 データセンター

保江(やすえ)邦夫著「解析力学」 

日本評論社、2000年

定価2200円

 天文学科を卒業し、大学院では素粒子理論を専攻し、今や数理物理学や脳機能を研究しているという著者の多彩な一面を覗かせてくれる数理物理学方法序説シリーズ全8巻の第6巻目。『高校から大学初年級程度の読者を想定し、…』と宣伝文句にあるが、想定された人たちでこれを読みこなせたら、将来、物理で飯が食えることは確実である。

 著者は、本書の「おわりに」で、学生時代のエピソードを活写している。ペダンチックな文体に気恥ずかしさを押し込んでいるように感じられるが、それだけに内容は真実を伝えており、“古き良き”時代の学生生活のようすが伝わってくる。「はじめに」と合わせて読むと、一層、興味深い。大学にはこんな気取った才人がごろごろしているか、と思うと、やる気の出る人もいれば、意気消沈する人もいるに違いない。

 という次第で、「はじめに」と「おわりに」しか読んでいないが、著者の保江氏は、これを「キセル読み」と表現していた。宣伝文に『「易しく分りやすい」解説に飽き足らない骨のある読者を求む』とあるとおりの内容であり、これから『勉強するぞ』と真剣に考えている人におすすめ。保江流「解析力学」の世界が、濃く、展開されている。